溶けていくのですね
時間の消えた夜明けのまちかど
わたしは
こんなにもたやすく
抱かれてしまいました
雨を少々
あなたの未来を湿らせてみたい
わがままは許していただけますか
うなじから肩にかけて
草原を渡る風が匂います
緑の馬をかつて恋したように
そんなあなたの首すじは
瞼を閉じていても
ソラになぞることができます
好きです
幾重にもおおいかぶさる深い闇が
一瞬に弾けて
ふいに現われる光芒とした世界は
吐く息にさえ生命が宿ります
愛撫されるために
ひとは金色の産毛を
素肌に残したままなのでしょう
あなたの背中
いつかほどき合う指先に
私の生涯をかける時が
くるでしょう
あなたに訪れる季節の春を
「春への序曲より」
「絵の川」より流れて五年、やがてたどり着く私の海は何色に染めあげられていくのでしょうか。今はただひたすら、この無音の海で波うつ青を束ねております。
何度も水をくぐりぬけた藍布は、風を呼びます。なつかしい手ざわりは素肌でたしかめて下さい。内に深い色をたたえております。
引きだすのはおまかせしましょう。
平成八年十一月一日 |